このレビューでは、ラピッドトリガーキーボード、「EverGlide SU64」の全貌を解き明かします。その特徴や機能が、日々のタイピングやゲーミングシーンをどのように変えるのか、詳しく見ていきましょう。
レビューを始める前に、本製品「SU64」と、比較対象となる人気モデル「MorkBlade MK60」の基本的な関係性について説明します。
この2つのキーボードは、心臓部であるPCB(電子基板)が共通であり、基本的な性能(ラピッドトリガーやアクチュエーションポイントの設定など)はほぼ同等です。しかし、「ケース」「キースイッチ」「キーキャップ」「ソフトウェア」の4つの要素が異なっており、これらが両者のキャラクターを全く異なるものにしています。
MK60がデザインと質感で圧倒的な存在感を放つのに対し、SU64はシンプルさとカスタマイズ性を追求したモデルと言えるでしょう。
以下に、本製品の具体的な仕様、特筆すべき機能、そして利点と欠点について詳述します。
At a Glance
商品仕様
- レイアウト
- 英語配列 / 60% / 64キー
- ポーリングレート
- 8KHz
- 単キースキャンレート
- 2304KHz
- フルキースキャンレート
- 256KHz
- キーキャップ
- PC / PBT (カラーによって異なる)
- アクチュエーションポイント (AP)
- 0.001mm - 3.5mmこの範囲で、キーが反応する深さを自由に設定できます。
- ラピッドトリガー (RT)
- 0.001mm - 3.5mmキーを少しでも押し戻せば入力がオフになる機能です。
- デッドゾーン
- 0
- マウント方式
- GASKET
- LED仕様
- Dual RGB LED
- プレート材質
- カーボンファイバー
- ケース材質
- アルミニウム
- 接続端子
- USB Type-C (基板左側)
- 寸法 (長さ x 幅 x 高さ)
- ---
- 価格
- ---
2. デザインと構造
SU64の外観は、CNC加工されたシンプルなアルミニウムケースが特徴です。
MK60が持つ、重厚で美しい背面の模様や左右のくびれといった派手な装飾はなく、ミニマルで落ち着いた印象を与えます。
質感自体はMK60の方が高級感がありますが、SU64の最大の魅力はその構造にあります。
革新的な「クイックリリース機能」を備えており、わずか数秒でケースを分解可能です。これにより、内部へのアクセスが非常に容易になり、メンテナンスやカスタマイズを頻繁に行うユーザーにとっては他に代えがたい利点となります。
キーキャップは複数種類から選択可能で、半透明のものを選択すれば、MK60が誇る美しいライティングをSU64でも体験できます。
MK60はキーの上下にLEDを2つ配置した『Dual RGB LED』仕様により、キー全体がムラなく完璧に発光しますが、SU64も同じPCBを持つため、同等の美しいライティングポテンシャルを秘めています。
キーキャップ材質の比較
PBT樹脂 (ポリブチレンテレフタレート)
サラサラとしたマットな質感が特徴。耐摩耗性に優れ、長期間使用してもテカりにくいのが最大の魅力です。
ABS樹脂 (アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
滑らかな手触りで、鮮やかな発色が可能。多くの安価なキーボードで採用されていますが、長期間の使用で表面が摩耗しテカりやすいという特徴も。
PC樹脂 (ポリカーボネート)
ガラスのような高い透明度が特徴の素材です。RGBライティングを最も美しく透過させるため、光るキーボードに最適です。打鍵音はABSとPBTの中間的で、クリアで深みのあるサウンドを生み出します。
3. 主要機能と搭載スイッチ
本製品の心臓部には、磁気スイッチが搭載されています。これにより、ラピッドトリガー(RT)やアクチュエーションポイント(AP)可変といった機能に対応し、RT・AP共に最短0.001mmからの設定が可能です。
この最短設定においても入力が途切れることはなく、動作は非常に安定しています。
さらに、キーの同時押し挙動(SOCD)の制御や、短押し・長押しで機能を変えるMODTAP、一つのキーに複数の動作を割り当てるDKS、複雑な手順を記録するマクロ機能など、キー入力を根本からカスタマイズする高度な設定も豊富に用意されています。
搭載スイッチ性能
EverGlide Wukong Switch
[透明]
- 製品特徴
- 超安定動作
- 初期押下圧
- 37gf
- 底部押下圧
- 47gf
- 総ストローク
- 3.4mm
- 作動ストローク
- カスタム
- 初期磁束量
- ---gs (PCB1.2mm)
- 底部磁束量
- 640±20gs (PCB1.2mm)
- スプリング長
- 16mm
- トップハウジング
- PC
- ステム
- POM
- ボトムハウジング
- PC
- 軸タイプ
- リニア
- 寿命
- 1億回
見てわかる!RT・APシミュレーター
キーの動きと入力の反応がリアルタイムグラフで丸わかり!
「W」キーで操作
メーカーごとの"個性"、覗いてみる?
あくまでご参考までに。主要メーカーのラピッドトリガーの遅延がどんなものなのか、その"クセ"のようなものを体験できる面白いツールがあります。息抜きにちょっと遊んでみませんか?【製作者BOSS】
ツールで遊んでみる4. パフォーマンス分析

- RT安定性
-
- 使用スイッチ
- EverGlide Wukong Switch
- テスト設定値
- 0.001mm ~ 0.02mm
- キャリブレーション
- 手動実施済み
- 観察された現象
- RT 0.001mm以上の設定で安定動作
- 遅延実測値
-
- 平均値
- 0.1226ms
- 四分位範囲
- 0.006ms
- 標準偏差
- 0.0319ms
- データ数
- 759回
5. ソフトウェア
SU64のソフトウェアはMK60と異なるものが採用されています。
MK60と比較すると、人によっては少し使いづらいと感じるかもしれません。
しかし、ラピッドトリガーや各キー設定、キャリブレーションなどで大きなストレスを感じることはないでしょう。
そして本製品は、全ての詳細な設定(RT/APの数値、各キー機能、マクロ等)を、用途の異なる複数のプロファイルとして丸ごと保存できます。
例えば「ゲームに特化した超速設定」と「普段使いに適した安定設定」を一瞬で切り替えることができ、この一台であらゆるシーンに最適な環境を構築する、まさに万能機と呼べる仕上がりです。
※本製品は、必ず手動キャリブレーションを行なってから使用してください。
6. 総評とまとめ
このキーボード、SU64は、最高峰の性能を内包しつつ、MK60とは異なる哲学で設計された一台です。
派手さや重厚な所有欲よりも、シンプルさ、実用性、そして何より「カスタマイズの容易さ」を追求するユーザーにとって、最高の選択肢となるでしょう。
Wukongスイッチによる高精度なタイピング、そしてクイックリリース機能という他にない独自の価値を持っています。
打鍵感の心地よさやケースの高級感ではMK60に一歩譲るものの、それは欠点ではなく、明確な設計思想の違いです。
自分の手でキーボードを育てていきたい、そんなDIY精神を持つユーザーの感性を強く刺激する、玄人好みの名機と言えます。
長所と短所
長所 (Pros)
- ・革新的なクイックリリース機能により、数秒での分解と容易なカスタマイズが可能。
- ・Wukongスイッチを採用し、軸ブレが非常に小さい高精度なタイピングを実現。
- ・MK60と同等のPCBにより、安定したRT/AP性能を誇る。
- ・シンプルでミニマルなデザインは、どんなデスク環境にも馴染みやすい。
- ・ 半透明キーキャップを選べば、MK60同様の美しく均一なライティングを楽しめる。
短所 (Cons)
- ・打鍵音という面では、MK60のGateronスイッチの方が一つ優れている印象。
- ・ ケースの仕上げはシンプルであり、MK60のようなずっしりとした高級感は薄い。
- ・Wukongスイッチの高精度な安定性と引き換えに、打鍵のフィーリングは好みが分かれる可能性がある。
- ・ソフトウェアは少し使いにくい。
この記事で確信を持てた方は、ぜひ以下のリンクから詳細をご確認ください!
ストアで詳細を見る7. よくある質問 (FAQ)
Q. キーボードがPCに認識されません(接続できません)。
A. キーボードが正常に認識されない場合、以下の手順を上から順にお試しください。
-
基本的な接続環境の確認:
- USBケーブルを一度抜き、PCとキーボード本体に再度しっかりと差し込んでください。
- PCの別のUSBポートに接続してください。特に、PCケースの前面ではなく、マザーボード背面に直結しているUSB3.0以上のポートを強く推奨します。
- USBハブは電力不足や不安定性の原因となるため、必ず取り外してください。
- 可能であれば、8KHzポーリングレートに対応した別の高品質なケーブルで接続をお試しください。
-
デバイスマネージャーからのドライバー再インストール (Windows):
Windowsがデバイスを誤認識している場合に有効です。
- Windowsのスタートボタンを右クリックし、「デバイス マネージャー」を選択します。
- 「キーボード」または「ヒューマン インターフェイス デバイス」の項目を展開し、該当するデバイス名(不明なデバイス等も含む)の上で右クリックします。
- 「デバイスのアンインストール」を選択します。(「このデバイスのドライバー ソフトウェアを削除する」のチェックボックスが表示された場合は、チェックを入れてください)
- アンインストール完了後、キーボードのUSBケーブルを抜き、30秒ほど待ってから再度差し込むと、ドライバーが自動的に再インストールされます。
-
キーボードの初期化(工場出荷時リセット):
上記で解決しない場合、キーボード本体の設定を初期化することで改善する場合があります。初期化の方法は製品によって異なりますので、付属のマニュアルをご確認ください。
これらの手順でも解決しない場合は、製品の初期不良の可能性もございますので、サポートまでお問い合わせください。
Q. 特定のキーが反応しません/反応が鈍いです。
A. キー入力が正常に反映されない場合、電力不足やデータ転送の問題が考えられます。まず、以下の接続環境をご確認ください。
【重要】電源と接続環境の確認
- 8KHzポーリングレートに対応した、高品質なUSBケーブルをご使用ください。コイルケーブルや延長ケーブルは信号の減衰や電力不足の原因となります。
- USBハブ等は絶対に使用せず、PC本体のマザーボード背面に直結しているUSB3.0以上のポートに接続してください。
上記の接続環境に問題がない場合、以下の手順で問題の切り分けを行ってください。
- まず、キーボードテスターサイトなどで、特定のキーだけが反応しないことを物理的に確認します。
-
(ホットスワップ対応製品の場合)
- 反応しないキーのキースイッチを、付属の工具で慎重に引き抜きます。
- 正常に動作している別のキーのスイッチと入れ替えてみます。
- 入れ替えて反応するようになった場合 → 引き抜いたキースイッチ自体の初期不良の可能性があります。
- 入れ替えても反応しない場合 → 基板側のソケットに問題がある可能性がありますので、サポートにご連絡ください。
Q. 専用ソフトウェアはどこからダウンロード / 使用できますか?
Q. このキーボードはホットスワップに対応していますか?
A. はい、このキーボードはホットスワップに対応しており、はんだ付けなしでお好みの磁気スイッチに交換が可能です。
本製品の性能を最大限に引き出し、最高の打鍵感を得るために、スイッチを選ぶ際には以下の2点を重視することをお勧めします。
-
軸ブレが限りなく少ないスイッチ:
キーを押し込んだ際のぐらつきが少ないスイッチを選ぶことで、より安定した精密なキー操作が可能になります。 -
底面がふさがっている(ボックス構造の)スイッチ:
スイッチには底面が貫通しているタイプと、ふさがっているタイプの2種類があります。本製品では、底面がふさがっているタイプのスイッチをご使用ください。
これらの条件を満たす高品質な磁気スイッチをお選びいただくことで、より快適なタイピング・ゲーミング体験が可能となります。
Q. キーキャップは交換できますか?
A. はい、Cherry MX互換の十字軸を採用しているため、市販の多くのカスタムキーキャップと互換性があります。