MCHOSE MIX87

01. はじめに

ラピッドトリガー搭載のTKL(テンキーレス)キーボード。 このカテゴリは長らく、3万円を超えるハイエンド機が支配する聖域でした。 「60%ではキーが足りない。でも、WootingやLogicoolのフラッグシップには手が届かない」 そんなゲーマーのジレンマを、この一台が粉砕するかもしれません。

「MCHOSE MIX87」。 価格は驚異の13,980円。 外観はどこか既視感のあるプラスチック筐体ですが、侮ってはいけません。 中身には8KHzポーリング、Gateron製磁気スイッチ、そして高機能なWebドライバーを搭載。
「見た目は捨てて、性能に全振りする」。そんな潔い割り切りが、この圧倒的なコストパフォーマンスを生み出しました。

この記事のポイント

  • 8KHzポーリングレート対応で、価格破壊の13,980円。
  • 音量ノブと3つの専用キーによる高い操作性。
  • 強力なソフト「M-Hub」でRT/APや特殊キーを詳細設定可能。

At a Glance

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Total Score

02. 商品仕様

レイアウト
英語配列 / 87キー (TKL)
ポーリングレート
8KHz
スキャンレート
256KHz
キーキャップ
PBT
アクチュエーションポイント (AP)
0.1mm - 4.0mm
ラピッドトリガー (RT)
0.001mm - 4.0mm
デッドゾーン
0
LED仕様
北向き RGB LED
プレート材質
アルミニウム
ケース材質
プラスチック
接続端子
USB Type-C (左上)
価格
13,980円

03. デザインと構造

第一印象は、「実用本位のプラスチック」です。
Logicool G PRO TKLを彷彿とさせるデザインですが、手に触れると質感の違いは明白。 高級感はありません。叩けば軽く、乾いた音が返ってきます。 しかし、そのチープさを補って余りあるのが「機能的な配置」です。

操作性を支配する「ノブ」と「専用キー」

右上隅に配置された音量ノブと、3つの物理ボタン(G1/RT/Light)。これが極めて便利です。 ゲーム中に瞬時に音量を絞る、設定プロファイルを切り替える。 これらの動作を直感的に行える物理インターフェースは、一度使うと手放せない快適さがあります。 特にG1キーは任意の機能を割り当て可能。利便性への配慮は、ハイエンド機に引けを取りません。

意外な伏兵「放熱設計」

本機はあえて薄型・フラットな底面形状を採用しています。 チルトスタンドを立てて使うことを前提としたこの設計は、PCB(基板)の熱を効率よく逃がすための工夫。 高性能な磁気スイッチは熱を持ちやすいため、長時間プレイ時の性能低下を防ぐ、理にかなった構造と言えます。

カラーバリエーション

MIX87 White
MIX87 Black
MIX87 Pink

04. 主要機能と搭載スイッチ

心臓部には、Gateronと共同開発した「Apollo」磁気スイッチを搭載。 ラピッドトリガー(RT)は最短0.001mmから設定可能です。

実際の挙動は、価格を感じさせないほど鋭敏。
指の動きに対する追従性は非常に高いです。 「入力が遅い」と感じることはまずないでしょう。 1万円台前半でこのレスポンスが手に入る事実は、市場にとって一つの事件です。

懐かしさを感じる打鍵音

正直に申し上げます。打鍵音は良くありません。
「カチャカチャ」とした高音成分が強く、少し前のゲーミングキーボードを想起させる音色です。
最近のトレンドである「コトコト」とした深い音を期待すると肩透かしを食らいます。 ただ、これは「音よりも勝敗」を優先した結果。 ヘッドセットをしてしまえば関係ない、と割り切れる方には些細な問題です。

打鍵音を聴く

打鍵音はかなりの高音で、とても良い打鍵音とは到底言えません。
少し前のゲーミングキーボードをイメージすると分かりやすいかもしれないですね。

搭載スイッチ性能 (Gateron Apollo)


Gateron Apollo Switch

[MCHOSE & Gateron 共同開発]

軸タイプ
リニア
総ストローク
3.1±0.2mm
作動ストローク
カスタム (AP可変)
初期磁束量
120±15Gs
底部磁束量
570±80Gs
潤滑
あり
寿命
1億回以上

05. パフォーマンス分析

遅延測定結果
※このグラフはパフォーマンスの一例です。
基板遅延+通信遅延の合計遅延を計測しています。
個人のPC環境によって、計測結果は左右されることがあります。
RT安定性
使用スイッチ
Gateron Apollo
テスト設定値
0.01mm
キャリブレーション
M-Hubにて実施済み
観察された現象
安定動作
遅延実測値
リセット遅延(平均)
0.841ms
トリガー遅延(平均)
0.670ms

遅延に関してはトップ層のキーボードと比較するとそこまでいい結果ではありませんでした。とはいえ、価格を考えれば十分な性能を持っています。

最新キーボード遅延ランキングを見る

06. ソフトウェア (MCHOSE M-Hub)

ハードウェアが優秀でも、ソフトがダメなら意味がありません。 その点、専用のWebドライバー「M-Hub」はぎりぎり合格点です。

インストール不要でブラウザからアクセスできます。
RT/APの0.001mm単位での調整はもちろん、DKS(1キーに2動作)、MT(長押し/短押し使い分け)といった高度な設定も網羅。 日本語に対応している点も、導入のハードルを大きく下げてくれます。

M-Hub 公式ダウンロード

タブをクリックすると、画像と説明が切り替わります。

機能1: パフォーマンス設定

M-Hub AP/RT設定画面
M-Hub 基本性能設定画面



AP/RT設定

キーボードの感度を最も細かく設定する画面です。
AP(アクチュエーションポイント)とRT(ラピッドトリガー)の感度を、全キー一括またはキーごとに個別に設定できます。どちらも0.1mmから4.0mmの範囲で、0.001mm単位での精密な調整が可能です。

  • AP (作動点): キーをどれだけ押し込んだら「ON」にするかを決めます。0.1mmにすると、触れただけで反応する敏感な設定になります。
  • RT (リセット点): キーをどれだけ戻したら「OFF」にするかを決めます。0.001mmにすると、指を少し浮かせただけですぐにOFF(リセット)されます。

基本性能設定

キーボード全体の基本的な動作を設定します。

  • ポーリングレート: キーボードがPCに情報を送信する頻度(Hz)を変更できます。8KHzなどの高い設定は、より低遅延な入力を可能にします。
  • RT Smart: RTの動作を安定させるためのアルゴリズム介入レベルを調整する機能です。値を低くすると入力の途切れ(入力抜け)が起こりやすくなるため、ご自身のプレイスタイルに合わせて安定する値を見つけることが重要です。
  • Win Lock: ゲーム中に誤ってWindowsキーを押してしまうのを防ぐ機能です。

機能2: キーマップと特殊設定

M-Hub キーマッピング設定画面
M-Hub 特殊設定画面



キーマッピング

キーボードのキー割り当てを自由に変更できる画面です。画像でハイライトされているキー(G1キー含む)をクリックし、割り当てたい機能を選択するだけで、直感的にカスタマイズが可能です。マクロの作成やメディアキー(再生/停止など)の設定もここで行います。

特殊な設定 (DKS/MT/TGL/SOCD)

より高度なキー入力を設定する項目です。初めての方にもわかりやすく解説します。

  • DKS (Dynamic Key Travel): キーを「押した時」と「離した時」で、それぞれ別のキー入力を割り当てる機能です。
  • MT (Mod Tap / Hold/Tap): キーを「短く押した時(タップ)」と「長く押し続けた時(ホールド)」で、別の動作を割り当てます。(例:タップでEsc、ホールドでCtrl)
  • TGL (Toggle Switch): キーを押すたびに、機能のON/OFFを切り替える(トグルする)設定です。
  • SOCD: WとS、AとDなどの反対方向のキーが同時に押された時の動作を制御します。ゲームでのストッピングなどに影響します。

機能3: ライティング設定

M-Hub ライティング設定画面



照明効果

キーボードのRGBライティングを詳細に設定します。多彩なプリセット(点灯、呼吸、ウェーブなど)から照明効果を選択できるほか、光の「速度」や「明るさ」もスライダーで簡単に調整可能です。

07. 総評とまとめ

Final Verdict

MCHOSE MIX87は、明確なターゲットを持った製品です。

  • 予算は抑えたいが、スペックで妥協したくない

  • 60%ではなく、使いやすいTKLサイズが必要

  • 質感や打鍵音よりも、実用性と機能性を重視する

これらに当てはまるなら、本機は「最適解」になり得ます。 プラスチック感や高音寄りの打鍵音といった弱点はあります。 ですが、13,980円で8KHzラピッドトリガー環境が手に入るというメリットは、それらをすべて帳消しにするほどのインパクトがあります。

コスパ重視のゲーマー

おすすめ度:★★★★★

8KHzポーリングレート、0.1mmのRTなど、2万円以上のキーボードと同等の機能が13,980円で手に入ります。
予算を抑えつつ勝ちたい人に最適です。

TKLレイアウト愛好家

おすすめ度:★★★★★

60%サイズではキーが足りないが、フルサイズは邪魔…という方に。
ゲームにも作業にも使いやすい絶妙なサイズ感です。

機能性・操作性重視

おすすめ度:★★★★

音量ノブや専用キーが非常に便利。
ゲーム中に瞬時に設定を変えたい、直感的に操作したいというニーズに応えます。

長所と短所

長所 (Pros)

  • 圧倒的なコストパフォーマンス(13,980円)。
  • 8KHzポーリングレート、ADC安定化など、価格を超えた性能。
  • 音量ノブと3つの専用キーによる高い利便性。
  • 豊富な内部吸音材による、ずっしりとした安定感。
  • 磁気スイッチのホットスワップに対応。
  • 効率的な放熱設計。

短所 (Cons)

  • 外観がチープで、プラスチック感が強い。
  • 打鍵音がかなり高音で、人を選ぶ(古いゲーミングキーボードのよう)。
  • 遅延はトップ層のキーボードには及ばない。
  • 北向きLEDのため、一部のCherryプロファイルキーキャップと干渉する可能性がある。

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08. よくある質問 (FAQ)

Q. キーボードがPCに認識されません(接続できません)。

A. キーボードが正常に認識されない場合、以下の手順を上から順にお試しください。

  1. 基本的な接続環境の確認:
    • USBケーブルを一度抜き、PCとキーボード本体に再度しっかりと差し込んでください。
    • PCの別のUSBポートに接続してください。特に、PCケースの前面ではなく、マザーボード背面に直結しているUSB3.0以上のポートを強く推奨します。
    • USBハブは電力不足や不安定性の原因となるため、必ず取り外してください。
    • 可能であれば、8KHzポーリングレートに対応した別の高品質なケーブルで接続をお試しください。
  2. デバイスマネージャーからのドライバー再インストール (Windows):

    Windowsがデバイスを誤認識している場合に有効です。

    1. Windowsのスタートボタンを右クリックし、「デバイス マネージャー」を選択します。
    2. 「キーボード」または「ヒューマン インターフェイス デバイス」の項目を展開し、該当するデバイス名の上で右クリックします。
    3. 「デバイスのアンインストール」を選択します。
    4. アンインストール完了後、キーボードのUSBケーブルを抜き、30秒ほど待ってから再度差し込むと、ドライバーが自動的に再インストールされます。
Q. 専用ソフトウェアはどこからダウンロードできますか?

A. MCHOSEの公式サイトから利用してください。

MCHOSE公式サイト M-Hub
Q. このキーボードはホットスワップに対応していますか?

A. はい、このキーボードは磁気スイッチのホットスワップに対応しており、はんだ付けなしでお好みの磁気スイッチに交換が可能です。スイッチを交換した後は、M-Hubの「キャリブレーション」機能を実行することを推奨します。

Q. 北向きLEDだとキーキャップが干渉しませんか?

A. 北向きLEDの設計は、光の透過性が高いキーキャップ(Puddingキーキャップなど)で最も美しく光る一方、一部の「Cherryプロファイル」のキーキャップと干渉する可能性があります。キーキャップを交換する際は、Cherryプロファイル以外を選ぶか、干渉対策がされたスイッチ(例:ステムが長いスイッチ)との組み合わせをご検討ください。